あたらしくビジネスを始める場合、あるいは、個人事業から規模が大きくなってきたような場合、その先にあるのは法人化です。


その時、すべて一人で始める場合は問題ないのですが、
親族同士
親友同士
旧知のビジネスパートナー
といったところで協調して法人を設立して運営していくことがあります。

ごく自然の流れだと思います。


しかし、これはNGです。
絶対に一緒にやらない方が良いです。

一緒にやる  出資を半々にするなど、経営上の力関係が同等を前提とする法人化


そのお仲間と経営上の力関係が明確になっていれば問題ないと思います。

これはこの業界にいると、「当たり前の常識」です。

そして長年の経験上、力関係が同じレベルの方々同士で法人化すると、近い将来で仲違いしてしまうのを沢山みてきました。


仲違いの理由は様々ですが、今までのように大きな会社ではなく、起業したてのミニマムな会社なので、経営状況・財政状態も不安定であることがメンタル弱体化につながってしまっているように思います。


例)大手シンクタンクの主席級コンサルタントの2名が独立


 独立理由:もう大手にいなくても、個人コンサルとしての地位を確立できたので自分たちで仕事を選んでやりたいことに注視していきたい とのことです。誰もがエリートと思うような方々です。

 株主構成:そのお二人で出資を半々 50%ずつ株を保有します。(株式会社を設立)

 役員:それぞれが代表取締役に就任(これは意外とみなさんご存じないかもしれません。2名でもOKなのです。)

 給与:設立月から、大手シンクタンクにいたときの水準の給与を支給していきます。


一つ一つを文章として見ても何らおかしくないように見えます。

しかし、それぞれ問題点の一例を挙げてみるとしましょう。
 

 独立理由:勘違いではないでしょうか?やはり大手在籍中の信用力は在籍しているからこそのものです。大手在籍者によくある計算ミスです。特に、大手メーカーなどの業種で、だからこそ手厚いサポートがあるような場合は致命的な計算ミスになります。

 株主構成:立ち上げ当初から、経営判断を行う者が決まっておらず、この時点で協調設立は困難を極めます。
 
 役員:それぞれが代表取締役に就任すること自体は悪くないです。それより株主構成の影響がこちらにも現れていると考えた方が良さそうですね。

 給与:すでに先の売上が決まっている、あるいは一事業をスピンアウトして設立するような場合を除いて、最初から固定費をぐんと上げてしまうことはかなり危険です。固定費は抑えてスタートしましょう。


結果、どうなってしまったでしょう…?


 あれれ?おかしい、、、売上が思うように上がらない、仕事が半減してしまいました。
 まずは、とても辛いこの期間が一年以上続きます。

 その一年間、それぞれが法人にお金を貸したり(個人からお金を持ち出し)、それぞれが見えないところでも相当な骨を折り、そしてご家庭の苦労までも増大していきます。

 そして、蓄えが底をつき始め、給与の支給が一切出来なくなります。

 しかし、それぞれお受験を控えている娘さんがいたり、医学生の息子さんがいたり、名門私立の学費が滞納されていたり、もう不安・不満のぶつけどころがなくなってしまいました。

 最後は、法人を解散して再就職する流れになるのですが、解散するときに会社の現預金などを2人で分けます。
 しかし、それぞれ生活がかかっているので1円たりとも譲れず平行線をたどります。  
 私は双方から話を聞き、何度も仲裁に入ってやりなおし、ということを行いましたがほぼ無力でした。

 最終的に、再就職が早く決まった人の方が折れてくれたことで、訴訟案件になる手前でなんとか収束しました。


 このお二人、日本でも名だたる大手シンクタンクの名物コンサルタント同士でかつ盟友でしたが、そのトラブル中は、
 「あいつはもう躁鬱になっているから、話は聞かない方がいいです」  
 「あいつは不倫している、ろくな人間じゃないから、話は聞かない方がいいです」  
 「あいつには1円もやりたくない、むしろ損害を賠償してもらいたいです」

 とそれぞれ口をそろえたように私に話していました。  
 まさか、設立前のあの紳士的なお二人がこうも野蛮な争いを繰り広げることになるとは、考えもしませんでした。
 でも、エリート街道まっしぐらのお二人が、会社だけではなく生活、家族が破綻しそうだという状況であることを考えれば当たり前かもしれません。


 今思えば、設立時点で私がいくつかお話ししていれば少しは変わったのかな?とおもうことがあり、悔やまれる経験です。
 

 そのときの教訓です。

  設立時の力関係には気をつけよう!
  創業時期は給与より販促・初期投資お金と時間をかけよう!  
  大手から独立するときはマイナスシミュレーションも考えよう!